発達障害治療薬の選び方|薬剤師が教える4つのポイント

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おくすりの凸凹

「子供の発達障害の治療薬って、どうやって選んでいるんだろう?」

「本当にこの薬を飲んで大丈夫なんだろうか?」
実際わが子に処方されたとき、そう悩んだり不安になる親御さんも多いと思います。

私は現役病院薬剤師です。二人の子供の育児中です。一人はADHD ASD傾向と診断されています。沢山悩みましたし、今も現在進行形です。

この記事では、そんな私が薬剤師として、いち母親として、子供の発達障害の治療薬を選ぶときに知っておきたい基本的な4つのポイントについて、やさしく説明していきます。

子供の発達障害とは?治療薬の役割を理解しよう

まず、「発達障害」という言葉を聞いて、とても不安になる方もいらっしゃるかもしれません。発達障害は、脳の神経の働き方に特性(傾向)があるということです。みんな得意なことや苦手なことが違うように、発達障害のお子さんたちも、特別な個性を持っているということです。 

※「障害」という言葉ではなく、「特性」ということもあります。ここでは、生活で困りごとがあることを前提に「障害」として記載しています。当事者母として、私は一つの「特性」として捉えています。

下の図は、神経発達の特性をスペクトラムで表したイメージ図です。

脳の個性の連続体(スペクトラム)のイメージ図。「発達障害」と「一般人」との間に境目はない。

特性の度合いが強く生活に困難をもたらしている場合、「発達障害」と診断されるかもしれません。

けれど「発達障害」と「一般人」との間に明確な境目はありません

中間には、診断されるほどではない、多様な脳の個性を持つ人々がいると考えられます。

 「発達特性がある人=発達障害」とは限らない理由/湘南こころの保健室

障害という言葉は時にお子さんや家族を傷つけることがあります。慎重に使わなくてはいけない言葉だと思います。

発達障害には、主に次のような種類があります:

  1. 注意欠如・多動性障害(ADHD):集中力が続きにくかったり、じっとしていられなかったりするお子さんたちです。
  2. 自閉スペクトラム症(ASD):コミュニケーションが少し苦手だったり、特定のものにとても興味を持ったりするお子さんたちです。
  3. 学習障害(LD):読み書きや計算が苦手なお子さんたちです。

こういった症状が一つではなく複数重なり合っていることもあります。

ここで大切なのは、これらの特徴は決して「悪いこと」と決めつけないということです。むしろ、独特の才能につながることもたくさんあります。その一方、時には日常生活で困ることもあるかもしれません。

そこで登場するのが、治療薬です。治療薬は、お子さんたちの脳のバランスを整えるお手伝いをします。例えば、集中力が必要なときにしっかり集中できるようになったり、落ち着きが必要なときにゆったりできるようになったりするんです。

治療薬は、「生活の困りごとをサポートする道具」のようなものです。道具ですから、服用したら解決するような魔法のくすりではありません。使い方や使う環境がとても大切になってきます。

治療薬を使うかどうかは、お医者さんやご家族とよく相談して決めていきます。薬を使わない方法もたくさんありますし、薬と他の方法を組み合わせることもあります。大切なのは、お子さん一人ひとりに合った方法をじっくりと見つけることです。

お子さんたちは、障害(特性)があるなし関係なく、とても素晴らしい可能性を秘めています。私たち大人の役割は、その可能性を最大限に伸ばすお手伝いをすること。そして、何より大切なのは、お子さんをありのまま受け入れようとすること、たくさんの愛情を注ごうとすることです。

そう頭でわかっていても、簡単な道のりではないことは、身をもって経験しています。私もあなたも一人の人間ですし、お子さんと一緒に一歩ずつ進んでいけばいいと思います。進んでいないように感じても、必ず進んでいます。大丈夫です。

今の日本は時に、その責任をお母さん一人に背負わせているように感じます。お母さんも一人の感情のある人間であること、それをこのブログでは一番大切にしたいと思っています。

では、発達障害の治療薬にはどんな種類があるのか、もう少し詳しくお話ししていきます。

発達障害治療薬の種類と特徴

お薬の種類がたくさんあって難しそう…と思われるかもしれません。ゆっくり、わかりやすく説明していきます。

まず、大切なことをお伝えします。どのお薬も、お子さんの生活をより快適にするためのものです。お子さんの個性を消してしまうことを目的にしているのではありませんし、「普通」にするためのものでもありません。お子さんの素晴らしい才能や個性を、より発揮しやすくするためのサポート役です。

では、主な治療薬の種類を見ていきましょう。

  1. 中枢神経刺激薬
    これは、主にADHD(注意欠如・多動性障害)のお子さんによく使われるお薬です。脳の中の「やる気スイッチ」を上手にオンにする手伝いをしてくれます。集中力が高まったり、落ち着いて行動できるようになったりします。 例えば、コンサータ®ストラテラ®といったお薬がこの種類に入ります。
  2. 非刺激薬
    これも主にADHDのお子さんに使われますが、中枢神経刺激薬とは少し違う仕組みで働きます。脳の中の「メッセージ」をよりスムーズに伝える手伝いをします。 インチュニブ®などがこの種類のお薬です。
  3. 抗精神病薬
    主に自閉スペクトラム症のお子さんに使われることがあります。イライラしたり、興奮しすぎたりするときに、少し落ち着かせる効果があります。 リスパダール®エビリファイ®などがこの種類に入ります。
  4. 抗うつ薬
    不安が強かったり、こだわりが強すぎたりするときに使われることがあります。気持ちを少し楽にする手伝いをしてくれます。 ジェイゾロフト®ルボックス®などがこの種類です。
  5. 抗てんかん薬
    気分の安定化に効果があります。てんかんのあるお子さんにも使われます。 デパケンR®ラモトリギン®などがこの種類です。
  6. 漢方薬 

これらのお薬は、医師が慎重に選んで処方します。お子さんの症状や年齢、体重などを考えて、一人ひとりに合ったお薬を選びます。

また、お薬には良い効果だけでなく、必ず副作用という「おまけ」があります。例えば、お腹が痛くなったり、眠くなったりすることがあるかもしれません。これらの副作用は、多くの場合一時的なものです。

その一方、重大な副作用もありますから、デパケンのような定期的に採血検査が必要なお薬もあります。採血に強い抵抗を示すお子さんには強いストレスになりますよね。医師はそういったことを考慮して治療薬を選んでいきます。

少しでも不安なことがあれば医師や薬剤師に伝えてください。

お薬は、決して魔法のくすりではありません。お薬だけで全てが解決するわけではありません。お子さんへの理解と愛情、そして適切な環境づくりが、何より大切です。お薬は、そういった総合的なサポートの中の一つの道具として考えてくださいね。

次は、お薬を選ぶときのポイントについてお話しします。

発達障害治療薬選びの4つの基準

お子さんに合ったお薬を選ぶときの基本的な4つのポイントについてお話しします。

1. 症状の種類と程度に合わせた選択

お子さん一人ひとりの症状は、十人十色です。例えば、集中力が気になるお子さん、お友達とのコミュニケーションが苦手なお子さん、感情のコントロールが難しいお子さんなど、これらが色々まざりあっていたり様々です。

お薬を選ぶときは、まずお子さんの症状をよく観察します。「どんなときに困っているのかな?」「どんなサポートがあれば楽になるかな?」「どんな時にうまくいいっただろう?」と考えながら、お子さんに合ったお薬を探していきます。

例えば:

  • 集中力が必要なお子さんには、脳の「集中スイッチ」を上手にONにするお薬
  • 気持ちの波が大きいお子さんには、感情を穏やかにするお薬

このように、お子さんの特徴に合わせてお薬を選んでいきます。

2. 年齢や体重を考慮した投薬量の調整

お子さんの年齢や体重も、とても大切なポイントです。同じお薬でも、大人の量をそのまま使うわけにはいきません。お子さんの体に合わせて、ちょうどいい量を見つけていきます。

小さなお子さんには少なめの量から始めて、徐々に調整していきます。成長期のお子さんは、体重が増えるにつれてお薬の量も変わることがあります。定期的に身長と体重を測って、お薬の量を見直すことも大切です。

3. 副作用のリスクと管理方法の確認

お薬には、良い効果だけでなく、時々体調を崩すこともあります。これを「副作用」と呼びます。

大切なのは、起こりやすい副作用を知っておくことと、どう対処すればいいかを理解しておくことです。例えば:

  • お腹が痛くなりやすいお薬は、食後に飲むようにする
  • 眠くなりやすいお薬は、寝る前に飲むようにする
  • 眠れなくなるお薬は、就寝時間から逆算して飲む時間を決める

このように、副作用を最小限に抑える工夫をしていきます。もし気になる症状が出たら、すぐにお医者さんや薬剤師に相談してくださいね。

4. 生活環境や日常習慣との適合性

最後に、お子さんの生活リズムやご家族の生活スタイルも考慮します。例えば:

  • 朝が苦手なお子さんには、起きてすぐに飲まなくてもいいお薬
  • 忙しい家庭には、1日1回で済むお薬

このように、お薬がお子さんやご家族の生活に自然に溶け込めるよう工夫します。

お薬を飲むことが、特別なことや負担になることがないように考えていきます。

まとめ

こういったことを大切にしながら、お子さんに合うお薬を見つけていきます。でも、これはスタート地点に過ぎません。お薬を使い始めた後も、お子さんの様子をよく観察して、必要に応じて調整していきます。

親御さん、そしてお子さん自身の感想や気づきはとても大切です。「このお薬、効いてる気がする!」「でも、こんな困ったことがあるんだ」など、少しの変化でも何でも伝えるとよいと思います

お子さんに合う環境づくりはお母さんだけで作らなくていいのです。サポート機関に沢山相談して、大きなチームとして、一緒に考えていくことが大切ですよね。

みんなで協力して、お母さんもお子さんも笑顔で過ごせる日を1日でも増やしていきましょう。大丈夫です。一人ではありません。必ず助けてくれるサポートメンバーは見つかります。

発達障害治療薬の正しい使い方と注意点

お薬の正しい使い方と、気をつけるべきことについてお話しします。

お薬の正しい飲み方

  1. 決められた時間に飲みましょう
    お医者さんや薬剤師さんが指示した時間に飲むことが大切です。例えば、朝のお薬は朝ごはんの後、夜のお薬は寝る前、といった具合です。時間を守ることで、お薬の効果が安定します。
  2. 決められた量を守りましょう
    「もっと効くかな?」と思って量を増やしたり、「今日は調子がいいから」と減らしたりするのはNG。お医者さんが決めた量をきちんと守りましょう。
  3. (できれば)水で飲みましょう
    お茶やジュースではなく、水で飲むのが基本です。牛乳や果汁は、お薬の吸収に影響を与えることがあります。とはいうものの、そんなに影響はない薬もあります。お子さんが、ストレスなく服用できることが大切だと考えます。
  4. 飲み忘れたときは?
    気づいたらすぐに飲んでも大丈夫ですが、次の時間が近い場合は、飛ばして次の分から飲みましょう。決して2回分を一度に飲まないでください。

注意すべきポイント

  1. 副作用に気をつけましょう
    お薬を飲み始めてから、お子さんの様子をよく観察してください。あらかじめ予想される副作用は医師から説明があるはずです。その症状がでたら、しばらく様子をみていいのか、すぐに相談すべきものなのか、質問できるといいですね。
  2. 他のお薬との飲み合わせに注意
    風邪薬や胃腸薬など、他のお薬と一緒に飲むときは必ず相談してください。相性の悪い組み合わせもあります。
  3. 急にやめないでください
    「もう大丈夫かな」と思っても、自己判断でお薬をやめるのは危険です。必ずお医者さんと相談して、徐々に減らしていく方法を決めましょう。
  4. 定期的な受診を忘れずに
    お薬の効果や副作用をチェックするため、定期的な受診が大切です。お子さんの成長に合わせて、お薬の種類や量を調整することもあります。
  5. 学校や保育園との連携
    お子さんがお薬を飲んでいることを、学校や保育園の先生にも伝えておくと良いでしょう。先生方と協力して、お子さんをサポートしていきましょう。

最後に大切なこと

お薬は、お子さんの生活をサポートする大切な道具の一つです。でも、お薬だけに頼りすぎないことも大切です。規則正しい生活、バランスの良い食事、適度な運動、そして何より、ご家族の愛情とサポート。これらすべてが合わさって、お子さんの健やかな成長を支えていくのです。

お母さん、お父さん、お薬のことで不安なことや分からないことがあれば、いつでも相談できる場所を作ってください。もし、見つからなければ、このブログでも大丈夫です。たくさんたくさん、ヘルプを求めましょう。

まとめ:お子さんに合った治療薬選びのポイント

大切なポイントをまとめました。

1. 一人ひとりに合わせたアプローチ

お子さんはみんな違います。同じ発達障害でも、症状の現れ方や程度は様々です。だからこそ、お子さん一人ひとりの特徴をよく理解して、お薬を選ぶことが大切です。

2. 専門家とのチームワーク

お薬選びは、お医者さん、薬剤師、そしてご家族みんなで協力して試行錯誤しながら進めていきます。気になることがあれば、遠慮なく相談してください。みんなでお子さんのことを考え、サポートしていくことが大切です。

3. 効果と副作用のバランス

お薬には良い効果がある一方で、時に副作用も現れることがあります。大切なのは、効果と副作用のバランスを見極めること。お子さんの様子をよく観察して、変化があれば専門家に相談しましょう。

4. 生活全体を見据えたアプローチ

お薬は魔法の杖ではありません。規則正しい生活、バランスの良い食事、適度な運動、そして何より愛情深い関わり。これらすべてが合わさって、お子さんの成長を支えていくのです。みんなでサポートする方法を考えましょう。

5. 継続的な見直しと調整

お子さんは日々成長しています。それに合わせて、お薬の種類や量も変更が必要になることがあります。定期的な受診と、ご自身やご家族による日々の観察が大切です。

6. 正しい服薬

決められた時間に、決められた量を、正しい方法で飲むこと。お薬の効果を最大限に引き出し、安全に使用するために欠かせません。

7. 長期的な視点

発達障害の治療は、短期間で終わるものではありません。長い目で見守っていくことが大切です。焦らず、ゆっくりと、お子さんのペースに合わせて進んでいきましょう。

最後に

お母さん、お父さん、そしてお子さんたち。発達障害と向き合うことは、決して簡単な道のりではありません。

長い暗いトンネルにいるような気持になることもあるでしょう。そんな時は一歩一歩、目の前の問題と向き合っていくといいと思います。進んでいないように感じる現実も、振り返れば道ができているものです。大丈夫。着実に前に進んでいます。

お薬は、その道のりを歩むための大切な道具の一つです。でも、最も大切なのは、みなさんの愛情とサポートです。お子さんの個性を尊重し、その可能性を信じ続けてください。あきらめないでください。

大丈夫、あなたは充分頑張っているから。GOOD ENOUGH

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